
犬猫の脊椎は頚椎7、胸椎13、腰椎6〜7、仙椎3からなっています。椎間板とは脊椎と脊椎の間のクッションの役割をする物質で、内部の髄核と外部の線維輪からなっています。ヘルニアとは「飛び出すこと」の意味で、椎間板ヘルニアには髄核が飛び出して脊髄を圧迫するT型と、線維輪が飛び出して脊髄を圧迫するU型があります。一般にT型は急性タイプ、U型は慢性タイプといわれています。犬では特にダックスフント、ビーグルなどに多く見られます。
椎間板ヘルニアの症状はどこで、どのようにヘルニアを起こすかで変わります。例えば頚椎でヘルニアが起こると激しい痛み、前肢のみまたは四肢の麻痺などが見られ、腰椎でヘルニアが起こると痛み、後肢の麻痺、失禁などが見られます。痛みだけの場合、椎間板ヘルニアと断定することは難しいですが、安静を保つことで見た目がよくなることがあります。問題なのはふらつきがひどい場合、日に日に立てなくなって足の感覚が麻痺する場合です。足をつねってもまったく痛みを感じないのは重症で、完全麻痺になることもあるので要注意です。(ただしふらつき、麻痺の原因がすべて椎間板ヘルニアとは限りません。)
診断はまずは足の反射、感覚の検査、レントゲン検査で行い、症状がひどければ全身麻酔下で手術前提の脊髄造影検査を行います。さらに脊髄造影での診断が難しい場合CT検査を行うこともあります。
治療は痛みだけ、軽いふらつきのあるものは内科的な治療をおすすめします。当院では安静を第一にして、レーザー治療器、ステロイド剤、ビタミンB剤で治療します。いくら薬物治療をしても安静が保てないと症状は悪化するので、2〜4週間、心を鬼にしてペットを閉じ込めることが必要です。T型のもので内服しても痛みがまったくひかないもの、足が動かないものは手術の適応です。脊髄造影検査で椎間板ヘルニアと診断できたら、その部位の脊椎を削って脊髄を露出し、飛び出た椎間板物質を取り出します。術後はすぐに歩けるようにはなりませんが、1〜2週間くらいで歩けるようになる子もいます。脊髄の損傷が激しい子は手術しても歩けないことがあります。そのような子は補助具で歩行を助けてあげたり、特注の車椅子が必要かもしれません。
椎間板ヘルニアの模式図(横から) |
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椎間板ヘルニアの模式図(正面から) |
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正常 |
椎間板ヘルニアT型 |
椎間板ヘルニアU型 |
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頚椎のヘルニア |
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